展着剤は農薬と一緒に混ぜて使うことで、農薬の効果を上げることが可能です。しかし、闇雲に使ってしまうと効果を下げたり、思いも寄らない薬害を引き起こす可能性もあります。
今回の記事では、機能性展着剤の1つである「ドライバー」の効果をご紹介します。
「ドライバー」とは
機能性展着剤の1つ
機能性展着剤は「アジュバント」と呼ばれ、一般的な展着剤(「スプレッダー」)が持つ濡れ性改善機能に加えて、”しみ込ませる機能”を併せ持った展着剤です。
つまり、アジュバントはスプレッダーの機能も持ち合わせながら、農薬に新たな効果を付与するので、オススメの展着剤となります。
「ドライバー」の概要
花王株式会社が開発した植物原料由来の新しい高濡れ性展着剤(アジュバント)です。
丸和バイオケミカル株式会社ホームページより
農薬散布時に薬液をはじいてしまうようなワックスの強い作物に対し、特に効果を発揮するよう設計され、散布した薬液をより確実に作物表面へ付着、拡展させます。
ドライビングフォース
一般的な展着剤は界面活性が主な成分であり、薬液の表面張力を低下させることにより、濡れにくい作物にも薬液が付着しやすくなるようにします。(濡れ性の向上)
一方、機能性展着剤「ドライバー」は、界面張力(水と植物界面、虫体および菌体界面に働く張力)も低下させる機能を併せ持っています。
実際に使ってみた
商品の説明書を読むととても優れた効果がありそうですが、本当のところはどうなのでしょうか。
一般的に濡れにくいと言われているブロッコリーに散布をしてみました。
※使用した薬剤は、ダコニール1000とトランスフォームフロアブルで、ドライバーを5000倍になるように添加しています。
どちらの写真も薬液をかけた直後の様子です。
ドライバーを添加しなかった方は、葉の上に薬液が残っているのに対し、ドライバーを添加した方は、広く葉が濡れていることがわかります。
使用した感想
ブロッコリーのように濡れにくい作物でドライバーを添加すると、薬液が直ちに付着していく様子がわかります。
ドライバーを添加しないと、表面張力によって水が弾かれてしまい、薬液が付着せずに、農薬の効果も期待できないでしょう。
したがって、濡れにくい作物ではドライバーは非常に高い効果を示します。
一方、比較的に濡れやすいと言われているナシの葉にもドライバーを使用してみました。
ドライバーを添加すると、ブロッコリーと同様、ナシの葉の表面に直ちに薬液が広がっていくのがわかります。しかし、ナシの場合、ドライバーを添加しなくてもあまり薬液を弾くことはありません。
ドライバーを添加すると、添加しなかった場合と比べるとより少量で薬液が滴(したた)ってしまいます。これは、ドライバーを添加することにより、薬液が葉の表面を薄く覆ってしまい、その上から散布された薬液は付着することができずに、滴り落ちてしまうものと考えられます。
(ドライバーを添加しなかったら1Lでも滴らないのに、添加すると500mlで滴ってしまうということです。つまり、500ml分の薬剤が作物に付着されないということになります。)
展着剤を使用すると、即効性は上がるものの残効性が低下するという報告もあります。ドライバーも必ずそのような傾向にあるとは言えませんが、可能性はあります。
ですので、ドライバーを使用するのであれば、濡れにくい作物に農薬を散布するときや、殺虫剤のように作物全体を広く覆いたいような時に使用するのが効果的かもしれません。
薬害
ドライバーの注意事項欄では、薬害について下記のとおり記載があります。
”適用農薬の使用上の注意事項に、薬害の生じやすい作物、気象条件などが記載されている場合には、本剤の使用をさけてください。”
”作物の幼苗期、高温時など、一般に薬害の生じやすい条件では本剤の使用をさけてください。”
と、ごくごく一般的な記載があるのみであり、特定の薬剤との混用は避けるといったような記載はありません。
実際に私が使用した際にも、特段薬害のような症状はありませんでしたので、適切に使用すれば問題ないかと思います。
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