ネオニコチノイド系農薬は、1993年に登場して以降、その優れた効果と人畜への影響が少ないことから、世界中で使用され、現在でも農業現場においては重宝している殺虫剤である。
しかし、欧州委員会は2018年にネオニコチノイド系農薬のクロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサムの3種類の使用を、屋外での使用を禁止した。
また、フランスでは3薬剤に加え、アセタミプリドとチアクロプリドも規制の対象とし、更には屋内での使用も禁止した。
日本も2021年5月に策定した「みどりの食料システム戦略」において、化学農薬の使用を2050年までに50%減らすという目標設定をしていますが、その中でもネオニコチノイド系だけが槍玉に上げられています。
e25afd991e8f461a7c2942866fa6e80dなぜ使用禁止となったのか
ミツバチの大量死
ネオニコチノイド系は優れた効果と対象となる害虫が多いことで、使い勝手の良い殺虫剤ですが、一方で害虫以外にも効いてしまうというデメリットもあります。
その中でミツバチの大量死というセンセーショナルなニュースが世間を騒がすようになり、原因がネオニコチノイド系農薬にあるのではないかと疑われました。
欧州委員会は、そのような背景も受けて、2013年にはネオニコチノイド系の部分的使用禁止、2018年からは屋外使用禁止としました。
しかし、疑問を投げかける声も
ネオニコチノイド系の一部の農薬がミツバチに影響を及ぼすことは確かです。
しかし、ネオニコチノイド系といってもアセタミプリドやチアクロプリドはミツバチへの影響が少ない薬剤として知られています。
(欧州委員会は、おそらくこのことを考慮して、規制する農薬は3種類のみにしたと思います。)
また、”ネオニコチノイド系がミツバチに影響する=ミツバチの大量死の原因” と決めつけるのは、科学を専門的に生業としている方なら短絡的であることは気づきます。
原因と結果を結びつけるのは簡単ではなく、実験や観察などを繰り返すことでデータを蓄積し、そのデータを客観的に評価することでようやく因果関係を推察します。
現に一部の農薬メーカーは、欧州の規制に対して反対意見を公式に表明しています。
成分名 | 商品名 | ミツバチへの影響 | 欧州委員会 | フランス |
クロチアニジン | ダントツ | 大 | 屋外使用禁止 | 屋内屋外使用禁止 |
イミダクロプリド | アドマイヤー | 大 | 屋外使用禁止 | 屋内屋外使用禁止 |
チアメトキサム | アクタラ | 大 | 屋外使用禁止 | 屋内屋外使用禁止 |
アセタミプリド | モスピラン | 小 | ー | 屋内屋外使用禁止 |
チアクロプリド | バリアード | 小 | ー | 屋内屋外使用禁止 |
冷静な判断を
”欧州でネオニコチノイド系農薬使用禁止”
ニュースをなんとなく見ていると、すべてのネオニコチノイドが悪者扱いされ、使用できなくなっているという印象を受けてしまいます。
一般の方だけではなく、農家のみなさんもこのことについて正確な情報を得ていないと思います。
更には、日本政府までも正しく理解できていないと思います。
冷静に、科学的に判断できるのであれば、”ネオニコチノイド系の使用を減らす”といった画一的な対策ではなく、個々の農薬の使用を制限したり、使用方法を変更させたりすればいいのです。
(農薬は登録制であり、農水省は登録内容に関して権限があります。)
一方、使用する側としても、”過剰には使用しない”、”ミツバチが飛ぶ時期には使用しない”などと、環境にも配慮した使用が求められます。
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