みなさんは「亀戸梅屋敷」をご存知でしょうか。
亀戸梅屋敷とは、東京都江東区にあった梅園のことで、現在ではお土産屋などのショップが復元されています。
その亀戸梅屋敷にある梅を剪定しました!という話ではなく、今回は亀戸梅屋敷の様子を描いた浮世絵の中の梅の剪定について解説を行います。
亀戸梅屋敷とは
歌川広重が描いた浮世絵
歌川広重とは江戸時代の浮世絵師。
代表作である「東海道五十三次絵」が有名です。
日常を切り取ったかのような風景画が得意な画家だったようです。
その歌川広重が1857年(安政4年)に描いたのが「亀戸梅屋敷」です。
亀戸梅屋敷は、亀戸天神社の裏にあった梅園のことで、8代将軍徳川吉宗も訪れたという由緒ある場所のようです。
その梅園の様子を描いた作品が「亀戸梅屋敷」となります。

ゴッホが模写したことで有名
江戸の日常を切り取った「亀戸梅屋敷」ですが、かの有名なゴッホ(van gogh)が模写したことで一躍有名な浮世絵となりました。
とはいえ、なぜゴッホと浮世絵が結びつくの?となりますよね。私もそう思い調べました。
すると、どうやら中学校で習った黒船来航が物語の始まりのようです。
1853年にペリーが浦賀沖へと来航し、日本は約200年ぶりに西欧社会との交流を再開しました。これにより、万国博覧会の開催や美術商の活動などを通して、絵画や工芸など日本文化が本格的に欧米へと知られていくことになります。西洋での伝統的な美術表現とは全く異なる感性の下でつくられた日本の美術工芸品は、西洋の人々に大きな衝撃を与え、19世紀後半の「ジャポニスム」ブームを巻き起こしました。
北斎今昔 「浮世絵の魅力に心酔していたゴッホ。彼は浮世絵から何を学び、絵に何を見ていたのか」https://www.adachi-hanga.com/hokusai/page/enjoy_97
黄金の国ジパングと呼ばれた日本は、長年鎖国という名の秘密のベールに隠されており、世界の人々にとって未知の国でした。
しかし、黒船来航という出来事により日本の門戸は開かれ、これまで外界との交流がほとんど無かった日本文化が一気に世界へと広まっていきました。
ゴッホは初めて目にした浮世絵に惚れ込み、その特別な色使い、平面的な表現、大胆な構成に心酔しました。
ゴッホは多数の浮世絵を収集するほか、自身でも浮世絵を模写するまでに至りました。
そして描きあげたのが以下の作品です。

剪定してみよう
さて、前置きが長くなりましたが、改めて浮世絵を見てみましょう。

この絵の中には、手前に1本、奥左に2本、奥右に1本の梅の樹が見えますが、今回は手前の1本を剪定します。
また、僕は食用梅しか剪定したことがないので、造園用の魅せる剪定ではなく、食べる剪定となることをご了承ください。
剪定方針
まずは樹全体を見てみましょう。
全体が写っていないので確かなことは言えませんが、まず感じたことは新梢が少ないということです。
新梢が少ないということは、この樹はそこそこ年月が経過したか病害虫などにより樹勢が低下したと想像できます。
まあ、現代ほどは栽培技術も確立されていなかったでしょうし、農薬なんかも無かったと思うので、今より樹の寿命も短かったかもしれませんね。
それを踏まえて今回の剪定方針としては、最低限の梅の収穫を確保しつつ、樹勢をよくさせるような方向で行きたいと思います。
実際の剪定
上段の新梢
最初に中央に2本伸びている新梢を見てみましょう。
真上に長く伸びていることがわかります。
本来であればこのように真上に伸びている枝は基から切り落としたいところですが、この樹は新梢が少ないので、やむを得ず残します。
とはいえ、この2本は狭い間隔で生えているので1本のみを残します。
この場合、2本のうち右側を切り落とします。①
理由としては、新梢2本のさらに右側に太い枝があるので、お互いが干渉しないようにするためです。
さて、残した方の新梢はどうするのかというと、1/3ほど残すように短くします。②
本来であればこの枝も真上に伸びているので、切り落としたいところですが、樹の中心部分に枝が少ないため、そこに枝を配置させるために残します。
この枝は長く伸びている強い枝ですので、1/3ほど残すと春以降に切り口から新梢が何本か伸び出すと予想できます。
その際に、何本かは横向き(斜め上向き)に伸びる枝が出てくるはずですので、その横枝を活かします。
(ちょうど奥にある樹の枝がV字のように伸びていますが、あのように伸びてくれると理想どおりです。)
3〜4年後には、1/3残した枝も次第に太くなり、その先に枝もたくさん伸びて、きっとたくさんの梅の実がとれるようになるでしょう。
下段の新梢
次に下段にある2本の新梢を見てみましょう。
下段・右側の新梢は、真上に長い枝が伸びていますので、こちらは基から切り落とします。③
一方、下段左側の長い枝はやや湾曲して伸びていることがわかります。
この枝は1/3程度残して切り返します。④
こちらも春になると新梢が伸びだし、外向きの枝も出てくると思いますのでその枝を残していきます。
この枝は発生点が低いので、低く仕立てることができ、のちのち収穫作業や剪定作業がやりやすくなるといったメリットもあります。
上段の太い枝
最後に上段右側にある太い枝の処理ですが、この枝については今回は何もしないことにします。⑤
この枝は真上に伸びていて花が咲いている位置も高くなっており、各種作業がやりづらい状況です。
できれば、少し切り下げて樹高を抑えたいところですが、あまり切ってしまうと枝が無くなってしまい収量も低下してしまいます。
ですので、今回は切らずにこのままとします。今回残した他の枝が育ってきたら、少しずつ整理していこうと思います。

- 上段にある2本の新梢のうち、右側を切り落とす。
- その左側にある新梢は1/3ほど残すように短くする。
- 下段・右側の新梢は切り落とす。
- その左側にある新梢は1/3ほど残すように短くする。
- 上段・右側にある太い枝はそのままにしておく。
時代を超えて世界の人々を魅了する浮世絵
いかがでしたでしょうか。
今回はゴッホも魅了した名画「亀戸梅屋敷」の梅を剪定してみました。(と言っても実際に剪定してわけではないですが・・・)
普段から梅の樹を見ている僕が見ても、この絵は梅の特性が忠実に描かれていると感じます。
おそらく作者の歌川広重は、当時の亀戸梅屋敷のありのままの姿を描いたものと想像できます。
時代を超えて世界の人々を魅了する名画に出会うことができ、ましてや剪定までさせてもらえるなんとなんと光栄なことでしょうか!
また、剪定したくなる絵画があれば剪定してみようと思います!
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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