農業や家庭菜園をしていると、作物は病気になってしまうものと思いませんか?
例えば、梅雨時期に庭で育てているトマトに灰色カビが発生してしまった。というような経験は少なからずあると思います。
それは、病気になる条件が揃ったから、病気になってしまったのです。
逆にいうと、条件を揃えなければ病気にはならないということになります。
この記事では、作物が病気になる条件について説明します。
結論 作物が病気になる条件とは
結論から言うと、作物が病気になる条件は、主因・誘因・素因のそれぞれが重なった場合です。
重なりが大きいと発病も多く、小さいと発病も少なくなり、重ならないと全く発病しなくなります。
でも、主因とか何・・・?となると思いますので、それぞれ説明します。
主因(病原菌)
主因とは病原菌のことです。
作物の病気は、生理障害でない限り必ず病原菌によるものです。
病原菌がいなければ、病気になることはありません。
例えば、海外で猛威を奮っているリンゴの病害「火傷病」は、日本では発生していませんが、それは日本に火傷病菌がいないからです。
先程の図でいうと、病原菌の量が多いと円が大きくなり、少ないと円が小さくなります。
誘因(環境要因)
誘因とは、環境要因のことです。
病原菌の一種であるカビは、水分がなければ成長することができません。また、種類にもよりますが、概ね15℃〜25℃前後が生育の適温となります。
たとえば、夏のよく晴れた日であれば、気温は35℃近くになり、作物上に水分は存在していないため、カビは成長しづらい環境となります。
逆に、梅雨の長雨が続いた日は、気温は20℃前後で、常に作物は濡れた状態になっているため、カビの成長には適した環境となります。
このように、病原菌にとって成長しやすい環境になると、病気になりやすくなります。
素因(植物要因)
素因とは、植物体が持っている素質のことです。
例えば、ある病気の抵抗性品種を栽培した場合は、その病気にはなりません。(抵抗性を打破した場合は除く)
作物は、遺伝子レベルで病気になるかならないかが、既に決まっています(遺伝子対遺伝子説)。
抵抗性品種は、遺伝子レベルで病気にならないようにつくられています。
他にも、植物体の素質としては、健全に育てるということも重要です。
日照不足、多肥料で育ったような軟弱な苗では、病原菌に抗うことができなくなってしまいます。
このように、植物体自体が弱ってしまうと病気になりやすくなってしまいます。
最初に話たトマトの例でいうと・・・
主因・・・灰色かび病菌
誘因・・・梅雨時期で雨が多く、気温もカビの適温
素因・・・抵抗性品種ではない。灰色かび病にかかってしまう品種。
これらのことが重なったので、病気になってしまったということです。
対策
円が重なると病気になるということであれば、重ならないようにすればいいのです。
主因対策
主因とは病原菌のことなので、病原菌を無くす(少なくする)ことを考えます。
たとえば、周辺の雑草をきれいに管理したり、土壌からの飛散を抑えるためにマルチを敷いたりすることで、環境中の菌量を少しでも減らすようにしましょう。
また、殺菌剤を散布することで、病原菌を減少させることも有効です。
誘因対策
誘因とは環境要因なので、病原菌が活動しづらい環境を整えることが考えます。
たとえば、ハウスや雨よけ栽培に転換することで雨があたらないようにするとか、換気をこまめに行い温度や湿度管理を調整することで、病原菌が成長しづらい環境をつくりましょう。
素因対策
素因とは植物体の素質のことなので、植物体自身を強化させることを考えます。
最も簡単なので抵抗性品種の導入です。
抵抗性品種を使えば、特定の病気になることは避けられます。
抵抗性品種がない場合は、密植や多肥料にならないよう、植物体1本1本をしっかりと作るように心がけましょう。
まとめ
病害対策は、3つの要因を考えて行うことがポイントです。
病害対策というと、農薬散布が先行しがちですが、農薬散布はあくまで手段の一つです。
農薬だけに頼っていては、完全に病害を抑えることはできません。
主因・誘因・素因を考えて、それぞれに対応した対策を行うことが、病害対策の基本であり、本質です。
- 主因対策・・・病原菌の量を減らす。雑草防除や圃場整備、農薬散布など。
- 誘因対策・・・菌が活動しづらい環境にする。雨よけ栽培やハウスの湿度調整など。
- 素因対策・・・植物体を健全に育てる。抵抗性品種の導入や適切な肥培管理など。
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