せっかく果樹の苗を買って、丹精込めて水やりや肥料をあげているのに、ちっとも実がならない!
自分の栽培方法が悪いのか、それとももっと肥料をあげなればいけないのか悩んでいませんか?
果樹の実がならないのは原因があります。
この記事では、果樹の種類に応じた対策について説明します。
結論
2種類の品種を植えてみましょう。
実がならない原因は色々ありますが、多くの場合これが原因です。
果樹の中には1本では実がならない作物、1本でも実がなる作物がありますので、以降ではその違いについて説明します。
果樹は単為結果するものとしないものに分かれる。
果樹は種類によって、受粉を必要としないもの(単為結果する)や受粉は必要だが1本でも大丈夫なもの(単為結果しない、かつ自家和合性)、他の種類の花粉とだけ受粉が必要なもの(単為結果しない、かつ自家不和合性)もあります。
まずは、種類ごとの特性を理解しなければ、いつまでたっても実はなりません。
以下では、その違いについて説明します。
単為結果しない果樹(授粉が必要)
授粉が必要な作物は、単為結果性ではありません。
さらにその中でも、以下のように分かれます。
- 自分の花粉では受粉できない種類 → 自家不和合性
- 自分の花粉で受粉できる種類 → 自家和合性
1本で実がならない原因は、この自家不和合性の種類の果樹を育てていることが可能性が高いです。
自家不和合性の果樹(他の品種の花粉が必要)
自家不和合性とは、簡単に言うと自分の花粉では受粉しないことです。
果樹の実がならないことの原因の一番の理由は、この自家不和合性の果樹を1本のみで育てていることです。
これらの果樹は、1種類の苗では実がなりませんので必ず別の種類の苗も買うようにしましょう。
(ただし、近くに別の種類の果樹が植わっている場合は、虫によって花粉が運ばれ、1種類しか育てていなくても実がなることもあります。)
ナシ
主な品種に、「幸水」、「豊水」、「新高」、「あきづき」などがあります。
最近では、鳥取県で育成した「新甘泉(しんかんせん)」という品種もあります。
ナシの場合、違う品種だったら良いというわけではなく、遺伝子レベルで受粉できるか否かが分かれます。
S遺伝子という受粉を制御する遺伝子が、同じ型だと受粉できません。
↓の表に、主な品種のS遺伝子と受粉可能な品種をまとめましたので、参考にしてください。
なお、「新高」は花粉が少ない品種なので授粉用としては不向きです。
S遺伝子 | 幸水 | 豊水 | 南水 | 新高 | あきづき | 二十世紀 | 長十郎 | |
幸水 | S4S5 | ✕ | ○ | ○ | ✕ | ○ | ○ | ○ |
豊水 | S3S5 | ○ | ✕ | ○ | ✕ | ○ | ○ | ○ |
南水 | S4S9 | ○ | ○ | ✕ | ✕ | ○ | ○ | ○ |
新高 | S3S9 | ○ | ○ | ○ | ✕ | ○ | ○ | ○ |
あきづき | S3S4 | ○ | ○ | ○ | ✕ | ✕ | ○ | ○ |
二十世紀 | S2S4 | ○ | ○ | ○ | ✕ | ○ | ✕ | ○ |
長十郎 | S2S3 | ○ | ○ | ○ | ✕ | ○ | ○ | ✕ |
新高は花粉が少ないので、授粉樹としては不向き。
例えば幸水であれば、幸水と新高以外を授粉樹として植えるとよい。
リンゴ
リンゴもナシと同様に他の品種の花粉が必要です。
もっともポピュラーな品種「ふじ」と相性のよい品種は「つがる」、「王林」、「世界一」です。
また、その逆につがる」、「王林」、「世界一」には「ふじ」の花粉が授粉しますので、これらのうち2種類を育てていれば受粉します。
サクランボ
スーパーで主に売られている品種は「佐藤錦」です。
「佐藤錦」と相性の良い品種は、「ナポレオン」、「紅秀峰」です。
サクランボは特に受粉がしにくい品目ですので、よりうまく授粉できるよう、風当たりが弱いところに植える、より多くの受粉樹を植える、人工授粉をするといった対策を行いましょう。
スモモ
6月ごろにスーパーに並ぶのは「大石早生」です。
早く採れる分、やや小さめなのが特徴です。
「大石早生」に相性がいい品種は、「ソルダム」や「ハリウッド」です。
スモモの王様「貴陽」は、スモモなのに大きくて種が小さく、酸味も無いためとても美味しい品種ですが、反面非常に授粉が難しい品種です。
そんな「貴陽」に相性がいいのは、「ハリウッド」です。
ただし、「貴陽」は非常に実がつきにくいので、人工授粉も行うなどし、確実に受粉させるようにしましょう。
ウメ
ウメといえば「南高」です。
「南高」は紀州和歌山で非常に多く生産され、梅干し用として加工されます。
「南高」は皮が薄く、粒も大きくなるので梅干し用途として非常に優れています。
「南高」に相性がいいのは、「梅郷」や「花香実」です。
群馬県で多く栽培されている「白加賀」は花粉が出ないので、受粉樹としては使えません。
(食べる分には大粒なので非常に優秀な品種です。ただし、実がつかない・・・)
梅は、品種によって花が咲く時期が大きく変動するので、開花する時期にも注意して選びましょう。
小梅は開花が早いので、普通の梅とは開花時期が合いません。
自家和合性の作物
モモ
多くの品種は自家和合性ですが、「白桃」、「川中島白桃」は花粉が無いので、他の品種と混植をしましょう。
ブドウ
ブドウは自家和合性ではあるものの、単為結果性も持ち合わせています。
基本的には授粉し、種が入った果粒ができますが、授粉しないと種がない果粒ができます。
授粉しなくても結実するので問題ないと思いそうですが、粒が大きくならないので残念な結果となってしまいます。
では、スーパーで売っている種無しブドウはどのように作っているのかというと、ブドウの花が咲く時期に「ジベレリン」というホルモン処理をすることで、ブドウに授粉したと勘違いさせています。
ジベレリン処理をすることで、種がなくなり、実が大きくなるという効果があります。
レモン
レモンに限らず、柑橘類のほぼすべてが自分の花粉で受粉できます。
果実の中に種があることから、受粉していることがわかりますね。
ただし、以下で説明する温州みかんだけは特別のようです。
単為結果する作物
温州みかん
日本の冬には欠かせない温州みかんは、皮がむきやすくて種がないのでとても食べやすいですよね。
多くの柑橘類に種があるにも関わらず、温州みかんは種がありません。
それは単為結果性のためです。
ですので、温州みかんは1本でも実がなります。
イチジク
漢字では、花が無い果実(無花果)と書くイチジクですが、海外と日本では性質が異なります。
海外のイチジクは、オスの株とメスの株が別れており、授粉することで果実がなります。
その際に、イチジクコバチという虫が花粉を運ぶ役となるのですが、この虫はイチジクの花の中に入ってしまうと、外に出れなくなりそのまま死んでしまいます。
では、その死んだ虫はとこに行くのかというと、なんとそのままイチジクの果実の中に残っています!
海外産のドライイチジクを買った際にはぜひ観察してみください。
一方、日本のイチジクは単為結果性であるため、受粉を必要としません。
授粉を必要としないのでイチジクコバチが残っているという心配はありませんが、代わりにアザミウマという虫が多数入っていることもありますので、お気をつけください。
柿(一部の品種)
柿は品種によって単為結果性が大きく異なります。
「富有」、「伊豆」といった品種は、単為結果性が弱いため授粉が必要となります。
一方、「平核無(ひらたねなし)」は単為結果性が強いため、授粉は不要です。
一般的に渋柿は単為結果性が強い傾向にあるため、1本でも実がなりますが、甘柿を植える場合は保険のために受粉樹(「禅寺丸」など)を一緒に植えることをおすすめします。
その他の原因
- 肥料が多すぎて花芽がつかない。
- 花芽を剪定してしまっている。
- 雄株と雌株のどちらかしか植えていない(キウイフルーツなど)。
受粉以外の問題としては、これらのことが考えられます。
そもそも花が咲かない、キウイフルーツを1本だけ育てているという場合は、上記の原因が考えられます。
まとめ
- 果樹は種類によって授粉が必要なものと必要ないものに分かれる。
- 授粉が必要な種類は、2つ以上の品種を植える必要がある。
- それでも実がならないのは、別の問題がある。
果樹は1年に1回しか採れません。1回失敗してしまと来年まで待たないといけないので、できるだけ対策を行って極力失敗を回避しましょう。
また、果樹は病害虫が特に多いので、こちらも忘れずに対策を行いましょう。
※「農業基礎シリーズ 果樹園芸学の基礎」は果樹栽培を学ぶのに非常に参考になる本です。写真や画像も多く、初心者〜熟練者にとってもためになります。
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